鍋がないなら作ってみせるのがサバイバル流

水の煮沸や食料の調理に必須とも言うべき鍋が無いときにどのように行動するかというのはサバイバル時には大きな問題である。

水の煮沸については地面と焼け石を使った煮沸法を以前お伝えしたが、やはり衛生的なリスクやまた、可搬性と持続性にはかけるし、熱効率も作業効率も低いといわざるをえない。

こういったことから、極々短期間でなければ鍋をどうにかして用意したほうがよいということになる。それで、始めから準備して鍋を持つという選択肢がでるわけであるが、装備を失ったり、そもそも持ち込めなかった場合にどうするのがよいのか。答えは「鍋を作ってしまう」だ。

鍋を作る、といっても、金属の鍋を作成するのではない。粘土でもって、焼き物の鍋を作るのである。

焼き物というには少し原始的過ぎるかもしれない。ここで作るのはいわゆる焚き火で焼き上げる土器である。土器は原始の焼き物であり、炉を必要としないレベルの焼き物である。また、原料となる粘土は質を問わなければかなり広範囲に分布しているため、練り上げるための水が用意できるならばどこででも作れるといってよいだろう。

火は土器を乾かしてから焼き上げるように意識し、少しずつ火力を上げるようにして焼いていく。一気に火力を上げすぎると割れてしまうからだ。よく焼けたものは硬く高い音がする。

鍋だけでなく、他の器類や調理道具も作れるから、野外活動に必要なものを多く作ることができる。土器は強度的に不安はあるものの、耐火性があるからアイデアしだいで様々に用いることができるだろう。

ただし、土器に使う粘土は状態が悪いと成功率が低くなる。ひどい場合には、乾燥して砕いたり、ゴミを取り除く必要があるかもしれない。また、練って成型した後は乾 燥させる必要もあり、お手軽にすぐできるようなものではない。したがって、サバイバルなどの状況が長期に及ぶときに計画的に作る必要があるかもしれない。しかしながら、耐火性のある道具は活動の幅を大きく広げるから、材料が得られるときはチャレンジできるようにしておきたいものだ。

雨具の必要性とその応用性

サバイバルにおいて雨の対策というのは重要なものの1つである。

雨に濡れてしまうと体温は急激に下がり、体力を大幅に奪われる原因となる。また、雨により濡れてしまうことで火を使うことができなくなり、調理や暖房に支障が生じる。

そういったときのために、まずもって濡れないようにするための装備があるとよい。

雨に濡れるのは大体においていやなものであるから、現代においては雨具が大量に存在する。街中においては傘が大半であろう。手軽であり、衣類を乱さないし、蒸れることもないから便利な雨具である。

が、一方でサバイバルとなると雨具として優秀なのは雨合羽のような着込むタイプの雨具、そして、ポンチョタイプの雨具である。

上下に着込むタイプは運動に適する

着込むタイプの雨合羽は上半身も下半身も防水の服で、これであると、手がふさがることも無く雨の中でも活動的に行動できる。そういったものは登山やスポーツを意識して作られていることが多く、そこそこの値がするが、蒸れが少なく快適に運動できるように設計されている物もある。

ポンチョタイプは着脱が容易で応用もしやすい

ポンチョタイプの雨具はあまり見ることが少ないものであると思うが、スポーツ用品店で時折見ることができるだろう。おおよそ登山用の装備として扱われている雨具である。ポンチョタイプは頭からかぶるだけの簡単な構造であるので、手軽にかぶれ手軽に脱げるから天候が不安定なときに重宝し、またその単純な構造ゆえに他の用途に転用がしやすい。

雨具の応用法

サバイバルに重要なのは1つの道具を1つの利用法でとどまらせないことだ。雨具も雨から身を守るだけではない。

たとえば上下に着込むタイプは、雨の侵入を防ぐために、どうしても他の衣類に比べて通気が悪くなる。が、それは逆に言えば寒い空気を通しにくいわけであり、寒冷時では一番外に着ておくことで寒さから身を守るための一層の防御層となる。

また、ポンチョタイプはより利用法が多い。ポンチョタイプのほとんどは伸ばすと真ん中にフード付の穴の開いた四角いシートとなるようになっており、これを用いてシェルターの天井にすることができる。また、シートの形を使い、落ち葉や草などを集めてもよいし、雨水を集水することもできるだろう。フードのある穴の部分を縛って簡易のボートの底にするというアイデアもあったりして、大体防水のシートを使ったアイデアは流用して活用できると考えて良い。単純なゆえの応用性である。

雨の対策、水濡れの対策は絶対にひとつは用意すること

なんにせよ、雨対策は必須である。どんなに天候がよさそうに見えても、突然の雨に降られることはあり、サバイバル状況下ではそれが後々の行動に影響を及ぼす。場合によっては体力の低下が命の危険につながる状況で、雨は強烈なリスクである。無駄に体力と健康を損なわないように常に備えよう。

コード(紐)の種類と利用法の違い

紐や縄の類のことを英語でcordageというのであるが、その種の紐類は単純な物ゆえにその用途は多岐にわたり、またその種類も多くある。

一般生活でよく使われる物ではビニールロープやタコ糸などであろう。また、キャンプでは張り綱にガイロープなどと呼ばれるロープを使ったりする。こういった通常の場合に使う際には、価格と機能から、それぞれ専用の物を使うことが多いと思う。

一方でサバイバルでは道具の運搬や調達に制限があるので、ひとつひとつの多機能性や応用可能性が重要になってくる。その点でサバイバルにおいてよく使われ、重要であるのはパラコードと麻紐であると思う。

強度と汎用性に優れるパラコード

パラコードはもともとはパラシュートに使われるロープで、主にナイロンで作られている強度に優れたロープである。その強度はミルスペック(アメリカ軍の規格)に準拠した物で日本でよく流通している物であれば250kgの過重に耐えられる程の耐久度であり、その太さもだいたい4~5mm程度で手ごろである。

その強度であるから、何かを吊るしたり引っ張ったりするのに使うのにうってつけである。単純な結びではほどけやすいが、きちんとしたロープワークの知識があれば様々な用途のロープとして重宝する。

また、パラコードはその構造が7本のナイロン糸からなる芯の部分と編みこまれた外側の部分とからなり、芯を抜いて分解することで、中の糸を他の用途に使うこともできる。釣り糸に使ったり、繕いものなどのための糸に使ったり、網を編んだりすることもでき、その用途はアイデアと技術でいかようにでも広げられる。また、残った外側のチューブ上の網紐も靴紐などに利用できたりするので無駄は無い。

パラコードはナイフなどで切ることができるが、やはりロープであるから、切った端をそのままにしておくとほつれていってしまう。ロープのほつれを防止する作業はたいてい面倒なのであるが、パラコードでは手軽に行うことができる。パラコードの場合はプラスチックでできているので、熱を加えると融けるから、端を火であぶるなり、熱した金属で圧着するなりして、ナイロンの糸を融かして1つにくっつけることで末端を1つに止めることができる。

このような強度の高さ、扱いの容易さから、パラコードはサバイバル用品として重宝され、またその素材の性質からくる色の多さからファッション的なサバイバル小物としても多くが出回り、手に入れやすいものになっている。

燃えやすい麻紐、熱に強い麻紐

一方で、麻紐は古典的であり、始まりの時期を調べるのが大変なほどに昔からある。農業やその他紐の必要なものに一通り使われた歴史があるのではないだろうか。もちろん、昔から、野外活動をする人も使っていたことは想像に難くない。

その構造は単純に撚りをかけられた紐であり、素材は天然の植物の繊維からできている。そして、これがサバイバルに大変重宝する性質なのである。

麻紐は構造が単純であり、紐を手でほぐすことが容易である。また、植物の繊維でできているから、乾燥している場合には大変燃えやすい。したがって、よくほぐしてふわふわの繊維状にしたとき、火口(Tinder 着火するとき火種を乗せて燃え上がらせる燃えやすい物)によいのである。

また、麻紐は植物繊維であるから、パラコードと違って熱により燃えることはあっても融けることは無い。パラコードで鍋などを吊るすと熱によりやわらかくなってしまうことがあるが、麻紐ではそのようなことはない。したがって燃えないまでも、高温になってしまうところに使うには麻紐がよいのである。

加えて言うならば、麻紐は天然素材であるから、森の中などに残してしまっても、自然に分解されるから環境負荷が小さいとされている。キャンプなどに行き、練習で工作するには良い素材であると思う。

新しい素材か古い素材かにかかわらず性質を見極めて使うべし

パラコードの強度には同時に熱可塑性(熱によってやわらかくなる性質)が伴い、麻紐にはそのような可塑性は無くとも比較しての強度の低さがある。それぞれに長所と短所があるから、可能であれば両方を備えて状況と必要に応じた使用ができるようにしておきたいところである。