ハサミで爪を切る練習をする

爪を切るというのは、現代社会において衛生と身だしなみに気を使うというマナーのひとつである。しかしそれは、身だしなみの問題だけでなくとても重要な意義がある。

爪が長いというのはその先の部分において肉に張り付いていない部分が多いということであって、これは一定の硬さをもったものが他に支えるものがない状態であることを意味する。つまり折れたり剥がれたりしやすいということである。

爪が剥がれるというのは大変に危険なことである。まずもって酷い痛みがあり、力を入れることが難しくなる。また傷口から病原が入ることも大きな問題である。特に爪のある手足は外部と触れる機会が多い体の部位であるから怪我には細心の注意を払うべきなのである。

さて、そういった事態を減らすためにはこまめに爪を切っておくことがよいのであるが、ここで忘れられやすいのが爪切りである。爪切りは専用の用具でされている方が多いだろうが、その爪切りは非常用品としては忘れられてしまいがちなものである。食料や水、そして衛生用のトイレやボディーペーパーなどもそろえている方でも爪切りがないという場合もある。特殊な形の用具であるから、それそのものがなければどうにもならない道具である。

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しかしながら、爪は爪切りがなくては切れないというものではない。爪は硬いが、しかし骨よりはだいぶ柔らかい。したがって様々な刃物で切ることが可能である。つまり身近で手に入りやすいもの、特にハサミで切ることは割と容易なことなのである。

ただ、ハサミで爪を切るというのは少しばかり緊張する作業である。皮膚や肉を切ることないように注意しなくてはならず、利き手側の爪を切るときは利き手と逆の手でハサミを握る必要もある。したがって、余裕のある時に少し長く伸びた爪を軽く切ってみて練習をしたほうが断然良い。初めて切るより二回目のほうが、そして練習すればするほど切り方はうまくなるものである。熟練すれば爪切りの質によってはハサミのほうが滑らかに切れることもあるぐらいである。

試してみて、どうしても怖い、うまくいかない等があれば忘れずに爪切りを準備するか、やすりを持つかするといいだろう。女性であればネイルケアに爪やすりを常備することもあるからそれでもいいだろう。ただ、やすりでつめの手入れをするのは時間がかかるし、ツールナイフなどにはたいていハサミがついているから、サバイバル的にはハサミで爪切りできるのは利点であるから、ぜひ一度は挑戦してみてほしいことである。

[やってはいけないこと] サバイバルでは危険な脳漿なめし

サバイバルにおいては被服については食料より緊急度が低いのであまり触れていなかった革のなめしについて、日本の知識環境では危険な部分があると感じたので今回は少しそのあたりについて解説したいと思う。

インターネットでなめしについて検索する人々に知識の偏りが生じている可能性に気づいたのはとあるweb小説を目にしたのがきっかけだった。その話の中では主人公が狩猟をし、その皮の活用でなめしをしようとしたとき、なめし用の薬が無いので自然物を使ったなめしとして脳漿なめしを検討していた。そこで私は、「はて、自然物でのなめしならまずは樹皮なめしでは?」と思ったのである。

改めてなめしについて検索をしてみると、「なめし 方法」などのワードで上位に脳漿なめしの実践を行っているページが見られた。これは私も以前に見た記憶があり、恐らくなめしについて調べている人の結構な人数が見ている物と思われる。上述の小説ももしかするとそういった背景があってのものかもしれない。このページは極めて実践的で、また詳細な記述が大変有用なものである。脳漿なめしという方法はかなり古くからの方法であり技術伝承の意味、また最終製品の質からも重要な方法であるということにはなんら異論の無いところである。ただし、脳漿なめしはメジャーな方法ではない。メジャーでない技術にはメジャーになれない何らかの原因がある。

そういった原因の多くは経済的なものである。脳漿なめしも脳漿の性質が一定しないとか脳漿を確保するのが面倒、費用がかさむなどの問題がある。そして、脳漿なめしにはもう一つ大きな問題がある。腐敗しやすい脳漿を利用するという根本的問題である。脳漿はつまりぐちゃぐちゃの脳そのものであるが、これは栄養分と水分が十分にあり、容易に微生物の温床となる。脳を栄養とする菌なりバクテリアというのはすなわち生きている生物の脳も食べるということである。そういったものが大量に繁殖する脳漿を扱うのは大変危険である。警鐘をならす方もいる(脳漿鞣しでおこる健康被害 : オグララ工房雑記)が、なめしにかかわらず方法について解説しているときにはあまりそういった危険について話が向くことは少ないように思われる。

現代では抗生物質の発達と医療の整備が進んだこともあって、そうした方法で事故が起きても死亡することは極少なくなったであろうが、サバイバル時や文明崩壊後などでは大変に致命的であり、危険な方法といわざるをえない。広く無機系やタンニン系のなめしが普及したのはその抗菌性と扱いやすさが寄与している部分も大きいだろう。

サバイバルに応用しやすい古代技術などはインターネットで効率的に調べることが可能になったが、検索上位だけをそのまま飲み込むだけでは不十分なこともある。suvtechを御覧の皆さまには、そこからさらに踏み込んで十分な知識を得てもらいたいと願うところである。

メルクマニュアルで症状と対処を知る

サバイバル時には医療的なサポートが極めて受け難くなることはよく言われているところである。もともと持病がある場合は薬の予備を十分に持っていなければ体調の維持がままならないこともあり、非常時に薬が不足しないように準備しておくことが重要である。

それだけでなく、非常の際には食料・物資の不足から、また災害等による直接・間接的な被害により、栄養失調や外傷、ストレスによる各種症状など、様々な不調に遭遇することが予想される。そういったとき、平時では速やかに医療機関において受診することが一番の対策であるが、非常時にはそういうわけにも行かないことが大半であるので自ら対処する他ない。そういったときに重要なのは知識の有無である。原因の特定と適切な対処が重要であるが、様々な症状とその原因を知っているのといないのでは同じ素人といえども判断の精度が大きく違ってくるものである。

そういったわけで、各種病気や怪我、栄養の欠乏や過剰、中毒症状などを知っておくのがよい。一昔前は家庭用医療百科事典の類を買う必要があったが、現在ではすばらしいものが無料で公開されている。

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様々な病気についてかかれてあるが、サバイバル的にはまず応急処置の項を見ていただきたい。それだけでもかなり勉強になるものである。他にも「栄養障害」のセクションと「外傷と中毒」のセクションはサバイバルにかなり有用であると思う。

その他にも軽く目を通しておいて損は無いだろう。かなり分量があり、全てに目を通すのは現実的ではないが、日々の不調を調べて、場合によっては医師に診てもらうことで早めに病気に気づくことが出来れば平時のサバイバル(つまりは健康維持)にも十分に役に立つ。

ネットでの検索やこういった書籍類を調べてばかりで不安になったり、病気を決め付けて受診するのも良いことではないらしいのだが、知識の増強に役立てて病院に行くきっかけにしたり非常時の役に立てたいものである。