冬に過ごすシェルターを作る

同じようなものの紹介を前年にもやったような気もするのだが、やはり冬のサバイバルの一大関心事は寒さへの対策である。焚き火での暖房やシェルターの構築が生死を分けることとなるため、それらについての知識が重要となることは明らかである。

さて、シェルターを作るといっても各種シートを用意して作るものや、本格的な構造物を作り上げるものなど様々であるが、今回紹介する動画では自然物を使って一人が横になれる程度の簡易的なものである。簡易的ではあるが、防風には十分であり、焚き火を併用すれば十分に寒い冬でも通用するものである。

ここでは柱となる杭を二本、地面に突き刺して立てて梁をそこに渡し、そこに棒を立てかけることで屋根兼壁の骨組みを作っており、そこに落ち葉を積み重ねることで雨も防げる屋根を構築している。床面には落ち葉を敷き詰めてクッションと断熱材としており、冬のシェルターによくある落ち葉を多用したシェルターである。また、壁として葉のついた木の枝(常緑樹なら何でもいける)を重ねて使ったり、もう一方には細い丸太と落ち葉を組み合わせた壁を構築したりしていて、基本的な技巧の組み合わせとして参考になるだろう。

シェルターは一辺が開けており、そのままでは防寒にはさほど効果は発揮しないが、この構造のシェルターは一辺を覆わないため労力の節約になるうえに、適切に焚き火を設置すると焚き火の恩恵を大きく受けられる構造でもある。屋根の部分は焚き火の熱を受け、反射することで内部にあるものを温めるし、屋根の厚い落ち葉の層が蓄熱することで焚き火の熱をある程度平均化して熱線を放出することで内部を温め続ける。焚き火の燃料を集めるのは少し手間だが、暖房効率のいいシェルターとそれに適した暖房装置を構築するよりははるかに楽であろう。

寒さは気力体力をともに奪うため、速やかなシェルターと暖房環境の構築が必要である。一つ一つの作業はさほど技術が必要なものでもないので、基本構造をしっかりと知っておき、万一のときに役立てるようにしておけば寒空の下で途方にくれることもないだろうと思う。

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重ね着する防寒パンツ

サバイバルにさいしては寒さというのは強力な敵である。直接的で致命的なものとしては低体温症があるし、凍傷もかなり危険であるというのはまず一般的に知られるところである。また同時に寒さが免疫力の低下を引き起こすということもあり、中長期的にも危険なのが寒さ、そして体温の低下である。

さて、そういった寒さ、そして体温低下を防ぐためには一つには暖房、アウトドアでは火を焚くなどの行為もあるが、移動中や火が焚けない状況では厚着をすることが一番の解決法になるだろう。冬になると防寒着を着込むことは日常的にも行われていることであるが、そういったことはサバイバルでもやはり重要で、防寒のための衣類を備えておくことは重要である。

防寒着を揃えるときによく注目されるのはフリースジャケットやダウンジャケットなどの防寒性能の高い上着である。一般的に広く販売されている物であるから手軽に揃えてもら得ると思う。これらは上半身を防寒するものであるが、その一方で忘れがちなものに下半身の防寒がある。特に暖かい地域になるにしたがって下半身の防寒は忘れられがちである。

温かな地域ではズボン・アウターパンツの類は重ね着するものという意識は薄いが、しかし寒いときにパンツを重ね着するというのはかなり効果のある方法である。当然のように上半身で重ね着するのと同じように、下半身も重ね着することで効果的に体温を保持することが出来る。また低体温は体の各部位に限定しても運動機能の低下などの症状を起こすので、サバイバル時の運動能力の低下を防ぐ観点からも各部位の防寒を気をつけなければならない。

個人的な話であるが、先日、重ね着用に防寒用アウターパンツを購入した。日常でもって防寒のために使用して、その性能を体感しているところである。室内着の状態では凍える寒さが、一枚重ねる枚数を増やすだけでかなり快適に過ごすことができるようになっている。日常で装備の機能を体感して性能の多寡、限界を知っておくことも重要であろう。

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頭を打っては安静にせねばならぬ - 脳震盪と死の危険

フィギュアスケートの選手、羽生結弦が他の選手と接触し、倒れたということがあった。その後、試合への参加が危ぶまれたが気合で持ち直して出場し、滑り終えた。感動しただとか言うむきもあるが、さて、サバイバル的にはどうか。これはまったくもって愚かな行為である。

脳震盪(のうしんとう)はかなり一般的で知っている方がほとんどであると思う。頭に強い衝撃を受けることで起きる症状のことであり、羽生選手の倒れた原因も脳震盪だといわれる。さて、それでは脳震盪のときに何が起きているか知っている者はどれくらいいるであろうか。そして、セカンドインパクトシンドロームという言葉を知っている者は?

脳震盪の後は安静にしなくてはならないが、これが頭を打った後、しばらくはくらくらとバランスが定まらないからだと思っている方はかなり多いのではないかと思われる。これは実のところ外側のかなり狭い一部を見ているに過ぎず、もっと重要なことのために安静にする必要がある。脳震盪時の脳の状態は思っているよりもひどいダメージを受けていると思っていたほうがよい。脳は柔らかな組織であり、衝撃で大きなダメージを負う。そのことは、より激しい衝撃である爆発をそばで経験したアメリカ兵が外傷を負っていないものの精神障害などを発生させるというような症例があり、実例を見た点からでも確かである。

爆発ほどの衝撃だと直接脳に物理的ダメージが及ぶであろうが、それほどの衝撃でない場合にはどうなっているのか。調べてみると、脳内の神経伝達物質が過剰に放出され脳内の代謝が異常になるようである。それにより、意識や記憶、場合によって感情や呼吸等にも影響が発生する。そして、その脳内代謝が正常に戻るまでには最低2週間はかかるというのである。それまでは安静にしておくことが望ましいのであるが、そこでまた大きな衝撃を受けてしまったらどうなるのであろうか。それがセカンドインパクトシンドロームである。

脳内の伝達物質が過剰に出ているところに、更なる衝撃が加わった場合、それが物理的損傷を加える程度のものでなくても更なる神経伝達物質の過剰放出を誘発する可能性が高い。そうなると、誤解を恐れず言うなら脳内が薬漬けの状態になる。脳が自分で発するからといって危険でないということはなく、麻薬などを大量に摂取したのと同様な危険があると思って良いだろう。すなわち死、そこまでいかずとも重篤な後遺症を伴う危険な症状に陥るのである。

であるから、脳震盪の後は絶対安静である。軽度なものであればさほどの症状もでないであろうが、立ち上がれなかったり意識を失うほどの脳震盪のあとは特に注意するべきだ。死にたくなければ最低2週間、また頭痛などのサインが見られればそれがおさまるまで無理をするべきではない。

とはいえ、サバイバルを考えると、安静にしておれない状況というのもあるから、そういう場合は二度目に受けたら死ぬものと思って慎重に行動するほかない。衝突はもちろん、高いところから飛び降りたり、細かな振動を長時間受けるのもよくないかもしれない。危険があると知ってやるのと知らずにやるのでは生存しやすさも違うだろうから意義はあるだろう。