ラーパナントゥリ - フィンランドの働く男たちの火

今までに何度かスウェディッシュトーチを紹介しているが、それはもともとはフィンランドのものであるといわれる。広く知られている名前がスウェディッシュトーチであるから私もそう呼んでいるが、フィンニッシュトーチ(あるいはフィニッシュトーチか)と呼ぶべきとの話もあったりする(ただ、語感があまりよくないから広まらないかもしれない)。

しかし、確かにこの種の焚き火はフィンランドから来たに違いない。フィンランドの言葉でラーパナントゥリ (Raappanan Tuli) と呼ばれる火の焚き方がある。山仕事や野外の仕事をするフィンランドの男たちが使ってきた伝統的なやり方だそうであるが、これはまさにスウェディッシュトーチの原型といえる方法である。

切り出した丸太を半分に割り、割れ目の部分を斧でささくれ立たせる(火がつきやすくなる)そしてこの割れた部分の間を適切な間隔にしてそこで火をおこす。実に豪快なそれでいて実用的な炎がこれだけで得られる。道具も斧だけでやってしまう。まさに男たちの炎だ。

長時間にわたり逞しい炎を上げるこの手のトーチは極寒の地ならではの知恵の結晶のように感じ入るところである。

鍋がないなら作ってみせるのがサバイバル流

水の煮沸や食料の調理に必須とも言うべき鍋が無いときにどのように行動するかというのはサバイバル時には大きな問題である。

水の煮沸については地面と焼け石を使った煮沸法を以前お伝えしたが、やはり衛生的なリスクやまた、可搬性と持続性にはかけるし、熱効率も作業効率も低いといわざるをえない。

こういったことから、極々短期間でなければ鍋をどうにかして用意したほうがよいということになる。それで、始めから準備して鍋を持つという選択肢がでるわけであるが、装備を失ったり、そもそも持ち込めなかった場合にどうするのがよいのか。答えは「鍋を作ってしまう」だ。

鍋を作る、といっても、金属の鍋を作成するのではない。粘土でもって、焼き物の鍋を作るのである。

焼き物というには少し原始的過ぎるかもしれない。ここで作るのはいわゆる焚き火で焼き上げる土器である。土器は原始の焼き物であり、炉を必要としないレベルの焼き物である。また、原料となる粘土は質を問わなければかなり広範囲に分布しているため、練り上げるための水が用意できるならばどこででも作れるといってよいだろう。

火は土器を乾かしてから焼き上げるように意識し、少しずつ火力を上げるようにして焼いていく。一気に火力を上げすぎると割れてしまうからだ。よく焼けたものは硬く高い音がする。

鍋だけでなく、他の器類や調理道具も作れるから、野外活動に必要なものを多く作ることができる。土器は強度的に不安はあるものの、耐火性があるからアイデアしだいで様々に用いることができるだろう。

ただし、土器に使う粘土は状態が悪いと成功率が低くなる。ひどい場合には、乾燥して砕いたり、ゴミを取り除く必要があるかもしれない。また、練って成型した後は乾 燥させる必要もあり、お手軽にすぐできるようなものではない。したがって、サバイバルなどの状況が長期に及ぶときに計画的に作る必要があるかもしれない。しかしながら、耐火性のある道具は活動の幅を大きく広げるから、材料が得られるときはチャレンジできるようにしておきたいものだ。

雨の日の焚き火の仕方

サバイバルにおいて、体力の消耗を防ぎ、また調理などをして身体を維持するために火を熾し焚き火をするというのは基本といっても良い。

その焚き火をするのには乾燥した状態で、焚き火の熱が不必要に奪われないほうがよく、そういうときには上手に焚き火をすることができるだろう。しかしながら、そういうベストな状態をいつも得られるわけではない。

野外活動では強風や雨天などの悪天候のリスクはつき物であり、しかもそういうときにこそ暖をとりたいということが多い。こういうときにこそサバイバルスキルが問われるのである。

雨の中ではまず濡れてない燃料を確保するのが重要である。軽い音がして折れる枝は外は濡れていても中は乾燥している。また、たいていの倒木や折れて落ちた太目の枝は朽ちていなければ中心部は乾燥してるので、割って内側を使うことで、乾燥した木材が得られる。樹皮も油分が多くて水分の影響を受けにくいものの1つだし、同時に樹皮はせっかく得た乾いた燃料をぬらさないためのカバーにもなる。こうして、乾いた燃料を得て焚き火を行う。

上の動画にもあるように雨の中であっても焚き火をすることができる。確かな知識と技術があれば、どのような状況でも切り抜けることができるのである。