地面での湯沸し

火は焚けるが鍋は無い。そういう状況というのは結構あるものである。

そもそも、火をおこすこと自体は原始的なもみ錐式の発火法(もみぎりしき:手をすり合わせて棒を回転させて行う発火法)などで行えるため、木とあとはとがった石でもあれば木を加工して発火することができる。

一方で鍋は火に耐えられる素材で、なおかつ容器状でなければならないので、簡単に得られるような物ではない。水を沸かしたりするのに大変便利な道具であるが調達は容易でないのだ。

しかしながら、それでも水を沸かさないとならない状況という物はある。サバイバル時では治療など望むべくも無いので万が一にでも水にあたってしまうわけにはいけないが、水は摂取しなければならないので、川だろうがどぶだろうが、水をなんとかして飲まなければならないからだ。

鍋がないからと煮沸しないわけにもいかず、何とかしなければならないときにそれを何とかするすさまじい方法がある。地面を容器にして焼け石で水を沸かすのである。

上の動画では掘った穴に粘土を貼り付けているが、湿らせた土を練った物でもある程度の止水性があり、水溜りを作ることができる。

この方法であれば、鍋が無かろうとも火と石があれば水を沸かすことができる。土も灰もゴミも少しばかり入るかも知れないがまとめて煮沸し消毒してしまうから大きな問題はない。

なお、もちろんのことであるが、味はひどいレベルであるから鍋が調達できる場合はそのほうがいいのは言うまでも無いことであろう。

単純な道具による発火:弓錐による発火法

暖をとるにせよ湯を沸かすにせよ、熱源として火が必要とされるのは皆さんお分かりであると思う。サバイバルにおいての火の重要性は言うまでもないほどに高い。

火をつけるには色々な方法がある。そもそも着火器がついているガス器具を使ったり、ライター・マッチをつかったり、もっとアウトドアでサバイバルライクな道具ではファイヤースチールなどもある。これらによって我々は効率的に火を熾すことができる。

だが、そういった道具をすべて失った場合には火を熾すことはあきらめねばならないのだろうか?そんなことはまったくない。

火熾しの道具が無い場合にどのように火を熾すかという問題は、人類の歴史を紐解けばすぐに解決する。摩擦によって着火をするのである。昔から人間は木をこすり合わせて火を得てきた。

摩擦による発火法は様々な技法があり、比較的簡易であるのは回転式、その中でも道具が簡素でまた、未経験者でも比較的行いやすいのが弓錐式であろうと思う。

この手の発火法は切れ目の入った板に棒を押し付けて回転させて発火させる。

回転の初期にはゆっくりと回転させて板と棒の摩擦で木屑ができるようにして、板の切れ目にたまった木屑に摩擦で熱を与えて発火させるのである。実のところ、板それ自体は摩擦部位に酸素が供給されないから発火しないため、切れ目を入れてそこにたまった木屑をくすぶらせる程度にとどまる。

これによってできた火種は弱い物であるから、地面や湿った物などに熱を奪われて消えてしまわないように、木の皮や木の葉などを下に敷いて保護してやる必要があり、また、火種ができたあとすぐに火おこしに使えるように十分な準備をしておく必要がある。

なんにせよ、火を得ることはサバイバルの基本であり、先進的な道具が無かろうとも火を得られる技術を知っておくことは重要である。