非常時の装備を3段階に分ける 中編

さて、常時持ち歩きができ、非常時でも即応できる装備を一揃えすることにすると、その装備はどうしても最小限にならざるをえない。したがって次の段階としてより大きな備蓄と装備のセットを考えなければならない。

重要であるが常時は持ち歩けないもの、持って移動するとき邪魔にならないもの

非常時では移動性が必要である。非常時、災害時に一番頼りになる移動手段というのは徒歩である。災害時には道路状態の悪化や様々な要因により動力による移動などが制限されがちなので一番確実な移動は徒歩での移動になるのである。したがって第2段階の装備として徒歩で持ち歩ける道具・食料の一式となるのである。

徒歩で持ち歩ける装備を考えるとき、その持ち歩きの手段はリュックサックということになるだろう。非常時には両手が使えるというのは非常に重要になってくる。肩掛け鞄や手持ちの鞄ではとっさのとき投げ捨てるにはよいが、両手を有効に使えないためリュックサックの方がよいだろう。最近では種々の装備の入ったキャリーバックが販売されるが、こういうものも不整地ではタイヤでの移動は難しいので背負うこともできるタイプがよい。

そして、装備の内容であるが、登山用などの食料品、鍋等の調理器具と火を焚く道具が特に重要なものである。背負える分だけとはいえ多少の容積、重量の余裕はあるため、3日分程度の必要カロリーをカバーできる食料とそれを温かく食べられる調理器具を用意することができるだろ。また、小型の浄水器も備えておきたい。持ち運べる小さなタイプのものは極小のもので100リットルほどの水をろ過できるものもあるから長期的な水の確保ができるよう、1つは入れておきたい。同時に、各種衣類も重要である。災害時に脱出するとき衣服や靴などが万全であるとは限らないから、備えておくセットに防寒と肉体の防護ができる程度の衣類は入れておきたい。歩きやすい靴や作業にも使える手袋をしっかり備えておき、不意の怪我がないようにしたい。また野営に備えてビニールシートやエマージェンシーシートなどの防水シート、寝袋などの寝具が可能であれば持っておきたいところだ。

なまじ容積・重量の制限が少ないから色々と選択肢があり迷うが、基本的には衣食住、衣類と靴、食料と水、シェルターと寝具を基本に準備すればまず間違いがない。そして、それから余裕があれば医薬品やその他必要で使いこなせると思われる装備を用意してゆけばよいだろう。

 

これ以上のかさばる装備もあるし、食料も長期的にはもっと必要になるが、それについてはまた次回。

非常時の装備を3段階に分ける 前編
非常時の装備を3段階に分ける 中編
非常時の装備を3段階に分ける 後編

非常時の装備を3段階に分ける 前編

非常時に、持ち出し袋などに水や食料、その他の装備を備えて持ち出す準備をしている方は多いと思う。だが、その装備は非常時に実際に持ち出せるだろうか。

大きな揺れで建物の倒壊が危ぶまれるとき、何よりも避難が重要である。素早く逃げるのに、重たい荷物を背負うのはかなり負担となるし、何より背負ったりする時間はないと思ってよいから、大荷物となる非常持ち出し袋を持ち出している暇はないかもしれない。準備した装備を持ち出すために死んだのでは何にもならない。

一方で、十分な装備を求めると、バッグがはちきれんほどの装備でも足りないことになる。こういうものは緊急で避難する際にはもって出ることはできないが、時間的余裕があるときにはあってほしいものである。

したがって非常時にもって出る装備を3つのレベルに分けて準備するのがいいだろう。食料や水、服や寝袋などなど、様々な装備はあるが、それぞれに重要度に違いがあり、また重さや体積も様々である。これらすべてをみな一様にひとまとめにしておく必要はないのであり、重要そうでないものはいっそ分けて別のところに置いておく思い切りが必要である。

最重要なもの、持ち運びに負担がないものをまとめる

一番持ち出しが優先され、絶対に持ち出す装備は、身近においておきいつでも持っておけるようにしたい。具体的には当座の水と携帯電話である。長期的には水は様々な方法で得ることができるが、例えばエレベーターなどの中に取り残されても水は必要だ。脱水症状の危険はどのようなところでもあるから、常に対処可能にしておきたい。また、携帯電話は外部との連絡を可能とし、救助の要請ができるうえに、その画面の光でライトの代わりにもできるので優秀な道具である。

他に重要度は低いが容積が小さく軽いものを一緒に用意しておくとよいだろう。例えば身分証や金銭、携帯電話の予備バッテリー、コンパクトな裁縫キット、鏡、ハンカチにポケットティッシュ、飴玉などコンパクトで重くなく、それで居て普段の生活にも便利なものを入れておくとよい。これらのものは日常生活で使うだけではなく、災害時にも役に立つことが多い。

私の場合は小さなバッグにこれらの小物を入れ、500mlの水筒とともに持ち歩いている。容量と重量の許す限りに色々と入れているからかなり色々な物品が入っているが、普段の生活のときにもとっさのときに役に立つものが多い。

 

さて、こういった簡易パックに必要となりそうなもの全てを含めることは到底できない。もう少し大きな装備を考える必要があるが、長くなるのでそれはまた次回としよう。

非常時の装備を3段階に分ける 前編
非常時の装備を3段階に分ける 中編
非常時の装備を3段階に分ける 後編

意外と重要な簡易トイレ - 清潔と安全のために

非常時のトイレ事情というのは居る場所により様々に変化する。上水道が停止すれば水洗トイレは使用不能になるが、そのときどういった代替法が使えるかは立地によって大きく異なることとなる。

例えば、一戸建てで庭があれば、底に穴を掘って済ますことができる。おまるのようなものを用意してそこにすませて穴を掘ってそこに投棄するという手もあるだろう。近場に山林がある場合も同様にできるかもしれない。suvtechは大自然を利用することを考えることが多いので、そういった手法を第一に考えることが多いからこういったトイレの方法を前提とした装備の紹介などしていたが、実際はいくつかの条件がないとこういった穴を掘ってそこに埋めるような手法は使えない。

穴で済ませられる場合というのは、まず土があること、そしてそこが利用できる土地であるということである。例えば公園などに土の部分があったとしても、周囲の人と共有する土地であるから、そういうところに排泄物を投棄することは難しい。ただでさえ災害時・非常時には気がたっているから、軋轢・衝突の原因となる行動は慎むべきである。

乾いた土を用意しておいて、排泄物にそれをかけて水分を奪い処理する方法もある。これは多くの量をためておけるから、投棄の必要がなく、コンポストなどの処置をすれば汚物を分解して使用し続けるようにすることもできる。

こういった自然や微生物等を利用する方法は、条件的に無理な場合があったり、設備が大規模になりがちとなる。都市部ではなかなか難しいところがあるだろう。

マンションや都心部で土地に余裕が少ないなどでトイレの対策が十分取れないとき、災害用品としてよく売り出されている簡易トイレ・携帯トイレといった製品が効力を発揮する。簡易トイレは家庭のトイレにセットしたり、それようの椅子が付いていたりしていて通常のトイレのように使える。また消臭剤などが付いており、ビニールなどに汚物を溜め込んでおくことでしばらく清潔にトイレを利用することができる。

こういったトイレ対策は、例えばマンションや避難所では下水に直接投下するトイレ施設などが設置される場合があり、そういう場合は各家庭には必要ないと思われるかも知れない。しかしながら、そういうトイレで待ち伏せする犯罪の事例があり、集団でつかうトイレでは安全上の不安があるから、各家庭で用意してあるほうが防犯上断然良いのである。

トイレの対策は衛生と安全を守る。地味ではあるが生命を守る大事なことであるので、余裕があるなら確実に準備をしておきたいところである。