持ち運びのできる焚き火? - スウェディッシュトーチ

キャンプやサバイバルに欠かせないものといえば火である。ガスやアルコール、ガソリンなどの燃料を使った器具は多くあるが、やはり基本的で、しかも自然の中で燃料が手に入る焚き火こそがサバイバルに重要である。

焚き火は基本的には一度組んでしまい、火をつけるとそこから移動することはできない。これは、焚き火用の器具を使うならば解決できるようなことであるが、そういった焚き火用の道具類はかさばったり重かったりすることがあるし、たまたま道具を持っていないときもあるだろう。焚き火用具は必須のものでないから、無理してまでもっておく必要がないからだ。

また、焚き火は一定時間すると火が全体に回り終わって後は炎を上げずに残された炭が赤く燃えるのみとなるが、明かりを望んで火を焚く場合にはこれは少し都合が悪い。

こういったものに適した木の燃やし方がある。スウェディッシュトーチである。

スウェディッシュといいながら、実際はフィンランド発祥のようであるが、とにもかくにも、寒い地方の火の技術である。冬の飾りつけとしてこのトーチを利用したり、木こりが暖をとったり茶をいれたりするのに使うようだ。

形は丸太を4つに割ってからもう一度合わせた感じである。その際、中心になるところをちょっとだけ削っておく、こうすると丸太の中心に穴の開いたような状態になる。これが、基本の形である。

ここから、割った部分を少し広げて、その間に枯れ草や木の皮などの燃えやすいものと細い枝などの焚きつけをはさみ点火すると丸太は割った割れ目のところから燃え始め、ゆっくりと内側だけ燃え続ける。また、空気が外から中に流れるから、外側は燃えない。

これによって燃焼中のスウェディッシュトーチは外を押さえることで持ち上げることができる。また、内部は軽い酸欠状態となるので、一酸化炭素等の可燃気体が発生し、炎を上げることになる。

このトーチは調理や暖房のみならず、明かりとして大変に優秀で便利に使える。構造的にも面白く、ユニークな燃え方をするから、試せる方はレクリエーションとして試してみてはどうだろうか。

いわゆる非常食はどんなときに必要か

非常食と呼ばれる食料は(その範囲は考え方によって変わるが、災害用品として売り出されている物と考えると)最大限に効力を発揮するシーンはさほど多くは無い。

たいていの場合では家庭に良くある保存の利きやすい食品を利用すれば事足りるし、家屋が無事であれば冷蔵庫の中の食品から利用すればさらに長く補給無しで生活できる。

で、あれば、非常食は何のために必要なのか。非常食の機能から考えてみよう。

非常食は第一に簡便である

災害用非常食とされているものの多くは乾燥食品で、水でもどすものが多い。アルファ化米や乾燥もち、フリーズドライ食品などある。これらは水を加えるだけで食べられる状態になるが、アルファ化米や乾燥もちの類は水でもどしても若干固いことが多く、食味はいまいちのことが多い。

最近では味のバリエーションも増えて、技術の進歩から食感と味も向上してはいるが、やはり固形物の乾燥食品は元のままの味と食感を保つことは難しく、あまり過大な期待を持つことはできない。

また、缶詰も非常食として災害用品などで売られているが、無調理で食べられ頑丈である。しかし、缶詰は重量があり扱いが難しい。(参考:私が備蓄で缶詰を重視「しない」理由

調理する間も無いくらい大変なときに非常食

それではどういうときにこれらの食品が効力を発揮するのだろうか。これらの食品の設計のされ方を見ると良くわかる。つまるところ、調理の余裕の無い緊急時に食べるというものが非常食なのである。

非常食の場合、調理はせいぜい水を加える程度で、ほぼ無調理で食べられる。何もかもが使用不能になっている状態で食事をするために準備をするものであるからそういう作られ方をしているのである。

大事な食料を損なわないために頑丈である

また、災害用非常食として作られている物は(保存性の向上のためか)たいてい頑丈に作られている。一般の食品はコスト上の問題と開封のしやすさからパッケージはさほど頑丈ではない。たとえば袋入りのスナック菓子は結構日持ちがするが、強く上からたたくと袋がはじけてしまう。これでは手荒に扱ったときに食品がだめになってしまう可能性が高い。

非常食はその点でパッケージが強いことが多くちょっとの衝撃では破損することがない。レトルトパックのようなアルミ張りのプラスチック包装であったりする。また缶詰はそれそのものが頑丈である(ただし、イージープルトップタイプの缶詰は開く部分に衝撃を受けると弱い)

この頑丈さはたとえば非常持ち出し袋に入れたときに手荒に扱っても大丈夫ということであり、自分の命以外に意識を向けることが難しい非常時においてその後の活力の元となる食料を守るために重要なことである。

食料に関する対策の最後の砦

つまるところ、非常食は他の食品が利用できる場合には出番は無い。もっとおいしく栄養が良く価格が安い食品は多くある。保存期間についても、日常で消費し入れ替えられるものであればアドバンテージは少ない。しかしながら、それらが失われるような甚大な被害をこうむったときに、非常食は最後の一手となる。非常用の持ち出し袋に、また住居以外の倒壊しても取り出せるどこかに備えておくことで、非常時の食料不安を払拭し、生存のための活動をすることができるだろう。

特殊な焚き火:煙の少ないダコタファイアホール

サバイバルやアウトドアのイメージとして欠かせないといっていいくらいの焚き火であるが、その焚き火には煙がつき物である。火を熾せば必ず煙は生ずる。

ガスや燃油、アルコールなど液体や気体を用いる火の場合は煙はないといっていいのであるが、木やその他植物、また炭などの固形燃料を燃やすと、火のないところに煙は立たず、ならぬ、煙の無いところに火は無いと言うかのように煙が出る。

これは、実際に火を焚いてみると結構な問題であるというのがわかる。長時間煙を吸い続けると咳が出たり、その他いろいろな健康の不具合が生ずる。煙でいぶすことで虫がつきにくくなり、また細菌が繁殖しにくくなるという利点もあるが、それゆえに吸い込むと問題が多い。

煙が出る原因はつまるところ木の熱分解にある。木が燃えるときにその成分は熱で分解され、ガス成分と炭と煙の成分に分かれる。ガス成分はメタンだったり一酸化炭素だったりするが、これは燃焼しやすく新鮮な空気があれば燃焼して炎として見られる。炭はいわずもがな。そして、煙の成分であるが、これは冷えて集められるとタールなどと呼ばれる成分で、高温であれば気化するが冷えると液化する。こういった成分が燃焼中にでて、空気中で冷えることで細かな液体の粒となり白く見えるのである。(蒸発した物体が冷えて白く見えるようになる現象は水でよく見られ、湯気と呼ばれるがそれと同じようなことが起きている)

さて、この煙の対策であるが、一番よいのは煙の成分を燃やしてしまうことである。煙の成分のタールは炭素と水素からなるから当然燃焼する。したがってこのタールが燃焼できる環境を整えてやることで煙は劇的に少なくなるのである。

煙を燃焼させる装置については据え置き型の薪ストーブなどではクリーンバーンなどといわれて、触媒や機構などとして措置がされているが、野外ではそのような凝った仕掛けをするわけにもいかない。したがってその場の土や石なんかでどうにかすることになる。

そういったときに登場するのがダコタファイアホール(Dakota Fire Hole)である。ダコタファイヤピット(Dakota Fire Pit)とも呼ばれるが、このやり方はとても簡素である。

2つの穴を地面に並べて掘り、その穴を底の部分でトンネル上につなげるだけなのである。そして、片方の穴で焚き火をすると、煙が少なく火を燃やすことができるのだ。

この構造は火の熱で周囲の土が暖められ、強い上昇気流が生じることで新しい空気が活発に供給される。また、土が熱を溜めているからそこを通る空気は暖められ、燃焼中の燃料を冷やすことが少なくなる。こうして、高温を保ちつつ空気の流入を確保することで煙の燃焼を促し、排出される煙を少なくすることができる。

下の動画は同様の構造で燃焼させているが、後半で水を沸かすのに鍋を直接置いたとたんに煙が大量発生してしまった。これは鍋が直接燃焼中の木に当たり、燃焼前の気化状態の煙成分を冷やしてしまったためである。こうならないように、調理の際には石などで五徳をつくり、直接あたらないように鍋をおく必要がある。