斧を基本から学ぶ1 - 伐採

斧は大変に有用な道具である。木を切り倒し、また加工するのに大変便利だ。自然を相手にするときにこれほど頼もしい道具もないと思う。古代の石器も手斧の類がよく出ており、大昔から頼れる人間の友として使われてきたのが斧である。

したがって今回から数回、斧の使い方を教えるビデオを紹介したいと思う。それぞれの技術については今までに紹介したものもあるが、一通りを今一度通してみることで、さらに斧について理解することができるのではないかと思う。前編英語であるが、実際の作業の様子も出ているから、見て感じ取れることがあれば幸いだ。

1回目は伐採である。木を利用するときに倒木を利用する方法もあるが、森のほとんどの木材資源は伐採して得られる。よって、斧の第一の仕事はまずもって木を切り倒して利用可能にすることである。

まずもって、やることは安全確認である。鋭い刃物である斧を振り回すのであるから、また斧は重量があり刃のないところがあたっても危険であるから、周囲に当たるもの、あるいは人がいないかをよく確認することが大事だ。また万が一、斧を目標からはずしたときに自分に当たって傷つけることのないような配慮も必要である。

実際の作業については斜めに切れ込みをいれて受け口を作り、反対側から追い口をつくる。こうすると木が倒れ始めて安全に切り倒せるはずであるが、動画中では木を完全に切り離してしまい、切った木が真下に落ちてしまっている。上部の枝が折れたりなどしていて、倒れることができなかった様子であるが、危険なので注意しよう。サバイバルでは危険がありそうなら手を出さない選択肢も考慮する必要がある。

伐採は斧を使う作業のうちでも最も危険なものの1つであるから十分に安全に注意する必要があるのである。

石を磨いて刃を作る

野外活動で重要で、一般生活で所持し難い道具として一番に挙げられるのは刃物であろう。昨今の凶悪事件などで刃物の所持は厳しく見られがちであるし、また正当な理由の所持でも軽犯罪法で逮捕、もしくは持ち物の没収をされる例も多く聞かれる。

したがって、日常的にサバイバルのために刃物を持つことが難しい場合もあるのであるが、極々原始的な技術を身につければ、いざというときに、すばらしい道具を作ることができる。すなわち石刃である。

石刃はすなわち石器であり、打製石器と磨製石器があるが、実のところ打製石器の技術の方がはるかに修練が必要であり、初心者には磨製石器を作る方がはるかに敷居が引くい。歴史的に見ると、打製石器から磨製石器に変化するのであるが、地域によっては打製石器の痕跡なく磨製石器を使用している地域もあるので、打製石器が磨製石器より容易く作れるというわけではないのである。

上の動画では川原の平たい丸石を拾い、それを研ぐことで刃をつけて、手斧(ちょうな・adze)を作っている。厚い石だと刃をつけるのに打ち欠く必要があり、結局打製からの磨製石器になるから、磨くだけで磨製石器をつくるのなら薄いものを探さなければならない。

また、研磨のみで作ろうとした場合はずいぶんと時間がかかる。動画では3時間かけて削り、刃をつけている。それも、この作者は以前に同様の方法で製作を試みており、その経験をもってして3時間であるから、初めてであればもっとかかることもあるだろう。

しかしながら、その苦労の甲斐はある。紙を切ってテストしているが、スパッと切れるとは言いがたいものの、きっちりと切ることができている。刃が付いている証拠である。この道具を使って数分で成人男性の腕の太さほどの木を切ることができている。ちゃんとした道具があればそちらを使うべきであるだろうが、何もない場合には十分といえる結果ではないだろうか。

斧で木を切る、薪を割る

斧は木を相手に作業するとき、あると頼もしい道具の1つである。単純で強固、整備も複雑でない。木を切るときにも、大まかに加工するときでも活躍する。

斧はそんなに精密な加工はできないが、斧をメインの道具として活動する人もいる。

上の動画では、斧をメインツールとして活動している。すでに切った木を組み合わせて作り上げられたシェルターと焚き火場所を作っており、そこを拠点に木を切り加工している。追加に簡易の作業台(台とまでいえないほどの作業用具)をつくり、また、薪割り台を新しくするなどしている。

薪割り台は一般的にイメージされる切り株のような台ではなく、ただ丸太を横たえただけのものである。しかしながら、これでも斧の刃を守り、また斧の刃から使用者を守るという薪割り台の機能は最低限果たしている。

木を切り、火を熾すというのは、文明生活の原点のようにも思われる。その原始の風景をみれば、必ず斧はあったであろう。斧はサバイバルの道具の究極の形の1つといっていいかもしれない。