石を磨いて刃を作る

野外活動で重要で、一般生活で所持し難い道具として一番に挙げられるのは刃物であろう。昨今の凶悪事件などで刃物の所持は厳しく見られがちであるし、また正当な理由の所持でも軽犯罪法で逮捕、もしくは持ち物の没収をされる例も多く聞かれる。

したがって、日常的にサバイバルのために刃物を持つことが難しい場合もあるのであるが、極々原始的な技術を身につければ、いざというときに、すばらしい道具を作ることができる。すなわち石刃である。

石刃はすなわち石器であり、打製石器と磨製石器があるが、実のところ打製石器の技術の方がはるかに修練が必要であり、初心者には磨製石器を作る方がはるかに敷居が引くい。歴史的に見ると、打製石器から磨製石器に変化するのであるが、地域によっては打製石器の痕跡なく磨製石器を使用している地域もあるので、打製石器が磨製石器より容易く作れるというわけではないのである。

上の動画では川原の平たい丸石を拾い、それを研ぐことで刃をつけて、手斧(ちょうな・adze)を作っている。厚い石だと刃をつけるのに打ち欠く必要があり、結局打製からの磨製石器になるから、磨くだけで磨製石器をつくるのなら薄いものを探さなければならない。

また、研磨のみで作ろうとした場合はずいぶんと時間がかかる。動画では3時間かけて削り、刃をつけている。それも、この作者は以前に同様の方法で製作を試みており、その経験をもってして3時間であるから、初めてであればもっとかかることもあるだろう。

しかしながら、その苦労の甲斐はある。紙を切ってテストしているが、スパッと切れるとは言いがたいものの、きっちりと切ることができている。刃が付いている証拠である。この道具を使って数分で成人男性の腕の太さほどの木を切ることができている。ちゃんとした道具があればそちらを使うべきであるだろうが、何もない場合には十分といえる結果ではないだろうか。

鍋がないなら作ってみせるのがサバイバル流

水の煮沸や食料の調理に必須とも言うべき鍋が無いときにどのように行動するかというのはサバイバル時には大きな問題である。

水の煮沸については地面と焼け石を使った煮沸法を以前お伝えしたが、やはり衛生的なリスクやまた、可搬性と持続性にはかけるし、熱効率も作業効率も低いといわざるをえない。

こういったことから、極々短期間でなければ鍋をどうにかして用意したほうがよいということになる。それで、始めから準備して鍋を持つという選択肢がでるわけであるが、装備を失ったり、そもそも持ち込めなかった場合にどうするのがよいのか。答えは「鍋を作ってしまう」だ。

鍋を作る、といっても、金属の鍋を作成するのではない。粘土でもって、焼き物の鍋を作るのである。

焼き物というには少し原始的過ぎるかもしれない。ここで作るのはいわゆる焚き火で焼き上げる土器である。土器は原始の焼き物であり、炉を必要としないレベルの焼き物である。また、原料となる粘土は質を問わなければかなり広範囲に分布しているため、練り上げるための水が用意できるならばどこででも作れるといってよいだろう。

火は土器を乾かしてから焼き上げるように意識し、少しずつ火力を上げるようにして焼いていく。一気に火力を上げすぎると割れてしまうからだ。よく焼けたものは硬く高い音がする。

鍋だけでなく、他の器類や調理道具も作れるから、野外活動に必要なものを多く作ることができる。土器は強度的に不安はあるものの、耐火性があるからアイデアしだいで様々に用いることができるだろう。

ただし、土器に使う粘土は状態が悪いと成功率が低くなる。ひどい場合には、乾燥して砕いたり、ゴミを取り除く必要があるかもしれない。また、練って成型した後は乾 燥させる必要もあり、お手軽にすぐできるようなものではない。したがって、サバイバルなどの状況が長期に及ぶときに計画的に作る必要があるかもしれない。しかしながら、耐火性のある道具は活動の幅を大きく広げるから、材料が得られるときはチャレンジできるようにしておきたいものだ。

石を使った暖房

体温の保持は健康上大きな意義があり、サバイバル時には生死を左右する問題となりうる。そのため簡易な構造物(シェルター)で身体を保護するわけだが、それでは足りない場合もある。

冬であったりしてシェルターがあるだけでは体温を保持できない場合に、焚き火などをして加熱してやる必要があるが、シェルター内で火を焚く場合は火災の危険があり繊細な注意が必要となる。(一方で煙による虫除けの効果はあるが)

そういうときに簡易で安全性の高い方法として、加熱した石をシェルターに持ち込み、それでもって暖房とする方法である。

一番簡単な方法としては焼け石をそのままシェルターの構造の下に入れてやることだが、石の温度によってはシェルターの構造物が焼けてしまうからベット状の構造の下に入れてやるなどの工夫がされたシェルター限定であろう。石の温度が木の棒でつかみ上げて煙が出ないくらいなら体に触れない場所に置けば大体の場合において暖房として利用できる。

上の動画では焚き火の周囲に置いた石をそのまま下に蹴りいれているが、石の温度によってはこのように足でぞんざいに扱うと、靴が焼けたり、素材によっては融けてよろしくないので、木の棒などで移動させるのがよいだろう。

他にも、もっと低い温度の石を利用すれば(大体、50℃くらいか)、湯たんぽのように利用する温石(おんじゃく)のような利用もできる。ただし、低温火傷を含む火傷には十分に注意していただきたい。

何はともあれ、工夫次第で石は暖房器具となるのである。