体の変調を把握すること

サバイバル時には自らのコンディションを十分把握しておくことは重要である。疲れすぎては体調を崩し、風邪など引いてしまえば動くこともままならなくなることもある。体が冷えるとしらずしらず体力を奪われて危険になるし、脱水が進行すれば思考も運動能力も低下してしまう。

そういうわけで、自らの体調、その変容の際の兆候を十分把握しておく必要がある。サバイバル時などで緊張状態にあるときでも自らの体調変化の症状を覚えておけば、変調を見逃さずに対策をとれるはずである。

具体的には自分の体の反応を覚えておくことである。危険と思われる体調変化について、安全であるときに軽く試してみておくことで、個人差のある症状について、自分のものを正確に把握しておくことが出来る。私の場合は例えば脱水時に汗が少なくなり熱がこもり始める。風邪の症状が出始める前に耳がかゆくなる。そういった症状と感覚を覚えておく。そうすれば早めの対策、水分補給や早めの休息などが行えるようになる。

脱水・低体温・風邪・貧血・高血圧・低血圧・アレルギー症状等々、様々な体調変化があり、その特徴的な症状を様々なところで知ることが出来るが、自分の場合の特徴は自分を実験台にして量るしかないというところがある。また年齢や季節によっても変わることがある。普段から自らをよく観察し、サバイバルに役立てられるようにしたい。

濡れることの危険

遭難時の死因で多く聞かれるのが低体温症である。事故等がなく、外傷による危険がなくとも、対策ないままでは体が冷えることによって体力を消耗し、最後には力尽きてしまうものである。したがってサバイバルではまずもって己の体温を保持するための方法を学ぶのであるが、例えばサバイバルシートやテント・ツェルトの使い方を学んだだけでは不十分であることがある。風をさえぎり、防寒効果のあるシートをまとっても体温が失われやすい状況というのがあるからである。

さて、髪がぬれていると風邪をひきやすいとか聞いたことはないだろうか。髪がぬれている状態であると、その蒸発によって頭が冷えるが、その分の熱を補填するために体力を消耗するので風邪をひくということである。頭部からの発熱は存外大きいものであり、また髪は水を多く含むことが出来るので体力を消耗するに足る吸熱が起こるのである。

そう、水は吸熱が大きいのである。例えば短時間での場合4℃の空気(冷蔵庫の中など)ではさほど冷たいと感じないが、4℃の水だと身を刺すほどの感覚となる。これは水が大量の熱を素早く奪うからである。同じ重さの空気と水の比較だと、それぞれが1℃上昇するのに必要な熱の量は空気より水の方が4倍ほど多い。また体積で言うなら3000倍も違うのである。また、これは温度が上がるだけの場合で、水は蒸発するときに多くの熱を奪う。水の蒸発するときの熱は、計算すると1kgで500kcalを超える。1kg、つまりおよそ1リットルの水を頭からかけてみたが、だいたい頭とTシャツがぐっしょり濡れる程度である。雨に降られてしまうとこれくらい濡れることはあるが、そのままだとかなりの体力を消耗することが分かる。

したがって、体温を保持するための原則としてはまず濡れないということを大事にしなければならない。雨に濡れないための雨具を用意する(アルミブランケットなどで代用も可能である)ことはもちろん、厚着をして登山して汗をかき、その後に気温が低下して低体温を引き起こした例もあるので、適切な衣類の状態を保つことも重要である。そして、体が濡れたなら乾いた布などでぬぐうこと、そして濡れた衣服は脱ぐことが肝心である。気温が低くとも濡れた衣服を着続ける方がよっぽど危険なのである。

最近では便利なもので、圧縮されたタオルなんかもあるし、衣類圧縮袋などもある。こういった袋に入っていると濡れることはないので、体や衣服が濡れたときのかえとして有効に働く。備えておきたいものである。

[補足]水の蒸発に関する計算
水の蒸発熱は40.8 kJ/mol
また 1cal≒4.2J     水の重さ18g/molよって、40.8/4.2/18≒540cal/g=540kcal/kg
(ただし、低温の水の温度上昇分の熱量は入っていない。実際にはこれ以上の熱が奪われるだろう)

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一寸先は闇 - 10フィートの棒

突然サブカルチャーの話になって申し訳ないが、複数人で集まって行うゲーム(コンピュータを使わないゲーム)のなかに、ファンタジー世界で冒険するという種類のものがあり、その中に出てくる道具に10フィートの棒というものがある。踏み込む先に危険な罠が潜んでいるかもしれない迷宮の中で少し先の位置の罠を探るなど、冒険途中の危険を避けるために使うアイテムである。

さて、サバイバル、というか野外活動においても一歩先に危険が潜んでいるということは十分に考えられる。藪・草むらの中では毒虫や蛇、また尖った石などもその姿を隠すし、突然の段差が隠れている場合もある。また湿地帯では急な深いぬかるみなども存在し、岩場では隙間に蛇が居たりそもそも岩が安定していなかったり、そして日本ではないだろうが、水場に置いてはワニが身を潜めていたりすることもある。

温厚といわれる動物でも突然ふんでしまったりすると苛烈な反撃をすることもあり、そういったことから愚直に足を踏み入れることは控えなくてはならない。一歩先に何があるか分からないから慎重に安全を確認する必要があるのである。

そして、安全を確認する一番リーズナブル(時間と労力のコストが少なく十分な効果が認められる)な方法が長い棒を使うということだ。前述の10フィート棒のように、長い棒でもって、行く先をがさがさと掻き分け、また時に叩いたりしつつ進むのである。大抵の場合、少し離れた場所から探りを入れた場合、虫や蛇などは向かってくるより逃げることのほうが多い。もちろん逃げない個体もあるが、それでも早急に察知することが出来るので対処のしようもあるというものである。

棒は森であれば調達は簡単である。落ちた枝などでそれなりに長さがあるものを選べばよい。また、トレッキングポールやステッキは装備としてもっている場合もあるし、人里であれば園芸用の支柱なども調達しやすく使いやすいだろう。調達の容易も危機回避の手法として有望である要因の一つである。

土地勘があるところでも藪の中は何がいるか分からないところがあるので、十分注意が必要であるから、長袖長ズボンの原則を守り、また追加で棒による探索などを取り入れて、安全な行動を心がけて欲しい。