小さな固形燃料ストーブ - エスビットポケットストーブ

サバイバルで湯を沸かしたり、調理したりと火を使うことは多く想定される。暖かな飲料や料理は体を温め、体力と精神力の維持に大変に役に立つし、何より寒い時期では熱い湯の一杯が生死を分けることだってある。

それがゆえにサバイバルでは火が大事である。火熾しの技やストーブ類(アウトドアでストーブというと調理などのために火を出すものを言う)に注目がいくのも火が生命維持に大きく役立つものであるからだ。

一番手に入りやすく、また持続性が高いと思われるのは薪を拾っての焚き火である。災害時、遭難時などサバイバル時に最小限の装備で焚き火は可能であり、また燃料も特殊なものでないから薪を集めれば長時間焚き火を続けられる。サバイバルといえば焚き火といって良いくらいである。

しかしながら、焚き火はその開始と撤収に時間がかかる。焚き火のための薪を集め、焚き火構造物を作り着火し、火が大きくなるまで調節してやる必要がある。また焚き火終了後、消火を確実にして火災の発生を防がねばならない。つまり、手軽ではあるが手間と時間がかかる、いわば鈍重な方法といっていい。

こういった焚き火の性質は、拠点をもってそこでしばらくすごすならば良いのであるが、避難中やその他の目的での移動中では足かせとなるものである。焚き火を熾せず休憩時に水を煮沸して飲めないとか、または休憩が長引き移動が遅くなるなどが考えられるだろう。

そういったことにならないように、登山などの際にはガスやアルコール、ガソリンといった燃料で調理等を行うようにすることが多い。もちろんそれは環境へのダメージを考えてもいるのであるが、薪を探してまわるなどするよりも断然フットワークが軽いのである。

だが一方でそういった液体・気体の燃料を使うストーブは少しかさばる装備となりがちである。ガス缶とストーブ本体と五徳、もしくはガソリンストーブ本体と燃料タンクなどアウトドアに慣れない人には少しばかり大仰に思える装備となってしまうし、避難用のパッケージとして極小の構成を考えるときには入れることができないサイズとなってしまう。

そういったことを考えたときに、最適と言えるのがエスビットストーブである。

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この小さなストーブは長辺でも10cmという極めて小型で携帯に良い。基本的には付属の固形のタブレット型の燃料を使うが、この付属の燃料も携帯に向き(煤は多く出るが)燃焼時間と熱量的にも簡易な利用では不足は無い。このストーブは固形燃料の燃焼用の台としてだけでなく五徳としても働き鍋などを置くにも十分な機能を持つ。

エスビットストーブはさほど大規模な利用を想定した装備ではないが、燃料タブレットを複数使えば炊飯などの用途にも使うことができアイデアしだいで幅広く使える上に携帯性がいいので、トランギアのメスティンと同じく愛好家の多い道具でもある。メスティン同様、価格の安いことも使用者の多さにつながっているかもしれない。メスティンとの組み合わせだと、エスビットストーブがメスティンの中に入るため、携帯性のよさを最大限に発揮することが可能である。

エスビットストーブの利用のアイデアは、その愛好者の多さもあってか、調べるいくつも出てくるが、基本は燃料の燃焼台と五徳としての使用である。コンパクトですぐ展開でき、シンプルで扱いやすいという道具として大変優れている。付属の燃料は好みが分かれるところである様だが、他の固形燃料を代用する方法もあるので好みのものをさがすといいだろう。

コンパクトで展開も撤収もしやすいストーブであるエスビットポケットストーブ、避難用の装備に小さな空きでもあれば利用を検討してみてもよいのではないだろうか。

 

弁当箱型の飯盒 - トランギア メスティン

加熱調理が重要であることは何度か述べてきた。装備を軽量に保つためには乾燥した水分の少ない食品を持つことがよいが、そういった食品を食べるには湯を沸かして加えるか、水を加えて加熱調理することが必要になることが多いからだ。

日本であればその代表的なものは米である。一般的に手に入りやすく、また扱いやすい穀物であるし、ジップロック等で保存し湿気を遮断すれば保存もきく(常温では多少劣化する)ので携帯する食料に向いている。しかし、みな知っているように米は炊飯の必要がある。日本のアウトドアで名高い飯盒炊爨である。

飯盒炊爨で用いるのは当然のことながら飯盒であるが、これは楕円の筒状のものであったり、またソラマメ型であったりする。これらの飯盒は大抵は吊るす用の取っ手が付いていて、紐か棒に吊るして火にかける。こういった飯盒は歴史が古く、馴染み深いものだが、軍隊用に開発された経緯もあって個人や少数のアウトドアやサバイバルでは少し応用性に欠ける面もある。曲線で構成されるため、内部に効率的に入れられるものに制限があり、また鞄の中などに入れるときに邪魔になりやすいのである。

そういった不満点を解決する品として、また手軽な容器として有名な飯盒がある。トランギアのメスティンである。このメスティンは四角い弁当型の飯盒である。近頃の若者はあまり見かけないかもしれないが、その昔(今でも探せば結構あるが)弁当箱といえばアルミ製であったが、そのアルミ弁当箱にハンドルをつけたような形をしている。

メスティンはクッキー缶のように蓋がぴったりと閉まるから、飯盒用途に使いやすい(蓋を載せるタイプのアウトドアクッカーだと炊飯時に蓋が持ち上がって不安定になる)。また四角く内部空間を効率的に使えるので、種々の小物をメスティンに詰めて、メスティン型のサバイバルパックをつくることもできる。蓋と本体の間をテープで巻いて止めれば内部の防水にもなり、よりサバイバルパックとして機能性が高まるだろう。同時に四角いフォルムは鞄などの中でも邪魔になりにくい。他のものを一緒に入れる際のデッドスペースが少なくなり、鞄の中のスペースを有効に使うことができるのである。

また、メスティンはアルミ製で、形状も量産性に優れるために価格が安い。これもメスティンが色々なところで愛されている理由である。手軽に試せる価格で、鍋や飯盒としての機能が気に入らない、もしくは他のいい道具を手に入れた場合でも容器としての性能はよいので一度試してみてはどうだろうか。

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火を焚かずに加熱 - モーリアンヒートパック

食事を温めるときに、一番単純なのは鍋で火にかけて温めるということだ。日常でも良くされているが、この方法は火を必要とする。また、レトルトパックなどは温めるときそのまま湯の中で茹でて加熱することもある。開けて鍋で直接加熱するにせよ、パックされたまま加熱するにせよ、どちらにせよ加熱には火が必要になってくる。

サバイバル中では火を使うのも一苦労であることがある。乾いた薪がなかったり、火を熾す準備をする時間がなかったり、もしくは煙が立つことが許容されない場所であったり、いろいろな事情で火を使うことが難しい場合もある。そういったときの代替手段を用意しておくことは悪いことではない。

今回紹介するモーリアンヒートパックはその火に代わる加熱手段の一つである。水を入れることで反応・発熱する発熱剤である。水が調達できれば、加熱用の袋に発熱剤と水を入れてパック入りの食品を加熱できる。

同様の加熱用品がMRE(アメリカ軍の軍用糧食セット)のオプションとして付いていたりすることもある。この種の発熱剤は火をつけるわけではないので、湯気は出ても煙は出ない。煙が出ないというのは重要で、煙が立つと遠方から敵に発見されることもあるから、軍事組織では重要な点であろう。

サバイバル、災害用品として備えるときは別に敵からの発見を気にしなくても良いのではあるが、火を焚かず、水を入れて加熱するというのはなかなかに便利な点もある。日本は水害も多く、住居や周辺環境全てが水浸しになるときもあるから、火を焚くための燃料を調達することができない可能性も考えなくてはならない。そういうときに水を注げば加熱できる装備があれば温かい食事で体を温めることができるだろう。

このヒートパックはある種特殊な装備であり、あまりこれをメインにすることはできないだろう。扱いも一癖ある(水素ガスが発生するので換気のいいところで使用する必要があるなど)し、火を使うほかの器具(固形燃料などの加熱器具)と比べても割高な感があるからだ。しかしながら他の全ての加熱用の装備に無いアドバンテージがある。様々なシチュエーションに対応するための特殊装備としては大変に意義深いものであるから、1つ2つ用意することを検討してはどうだろうか。