食用もされる古代からの虫下し - カヤの実

カヤの葉と実

カヤの実(榧実)は日本で古来から食べられてきた木の実である。カヤは木材として碁盤や将棋盤などに使われる、身の詰った硬く重い木である。木材としては耐久性があり、樹脂を多く含み、色合いがよいとされる。

枝葉および幹には独特の香りがあって、これが虫除けとなることから、蚊遣り木とよばれ、これが転じてカヤとなったといわれ、カヤの木片があると、その周囲に蚊が寄らないといわれることもあるほどである。枝葉を燃やした煙を防虫に使ったりするようだ。

食料としてみると、殻の中の種子を食用とすることができる。カヤはどんぐりや栗などと同じように、秋に実をつける。実は緑の果肉で覆われており、その果肉をまとったまま落ちるものがあるからそれを拾い果肉を割って中の殻付の実を取り出して利用する。

実は、殻付のまま7日間ほど灰汁に漬けて渋抜きをするそうであるが、十分に煎ることができればさほど渋抜きに気を使わなくとも食することができるようである。サバイバルにおいて7日間食べられないより、渋くても食べられるほうが良いから、食料の足りないとき、労力を惜しまねばならぬときは渋抜きは省略してよいだろう。

殻付のまま煎り、殻をはずして食するが、十分に渋抜きされたものは一般に食用されている木の実と同様においしいようである。渋抜きをしていないものは苦味、えぐみが強いので覚悟して食べる必要があるが、カヤの実は油分を多く含むのでそのカロリーは高く、食べられるなら食べない手はないだろう。殻を除いたあとの実25g(おおよそ20粒前後)で160kcalほどあるので500gもあれば活発に活動しても十分なカロリー摂取が計算上では可能だ。

ただし、カヤの実は薬効があり、そう多くは食べないほうが良いかもしれない。

カヤの実、榧実は生薬として知られ、20~30粒ほどを食べると虫下しに効くといわれている。また、食べ過ぎると下痢を起こしたり、痰が多くなるなどの副作用が起こるといわれているので、主とした栄養源としてみることは難しく、栄養補給もできる薬としてみたほうが良いかもしれない。

また、カヤはイチイ科の植物であるが、同じイチイ科のイチイは、種子や葉などの果肉を除いた部分は総じて毒があり危険である。同じ科の植物は似ていることが多く間違えないようにすることが大事だ。見分け方としては実が赤くなるのがイチイである。イチイの実は果肉は食べられるが他は食べられない。食料を採集する場合、確証のない場合は食べないということも大事である。