異常を無視する心理 - 正常性バイアス

危機がすぐ目の前に迫ってきているとき、人はパニックに陥ることが多い。しかし一方で、その危機が複雑なものであったり、その到達まで時間があったりすると、人はとたんに危機に鈍感になる。

正常性バイアスという言葉がある。自分に被害が及びうることに対して、自分は大丈夫、大したことないと過小評価する心理特性のことを言う。例えば地下鉄で煙がやってきても、ただ煙が出ているだけで火災でないと評価してしまうなどがある。さすがに火が目前に迫ればそういった鈍感は吹き飛ぶだろうが、そのときには手遅れであったり、パニックに陥りさらに泥沼に陥る可能性もある。この地下鉄の例は海外であるが、実際にあった例で、ぎりぎりになるまで避難がされなかったようである。

バイアスというのは偏見という意味である。正常性バイアスとは正常であるという偏見、つまり昨日も今日も異常などなく、危険など無いという思い込みのことである。無論、常に危険だと思い悩むのは杞憂なのであるが、しかしながら異常の兆候があっても理由を付けて正常と思い込むことは大変に危険である。

これはまた、自分だけ動くのは恥ずかしいという思いもあるだろう。危険を正確に評価せず周りの目だけを気にするのは、冷静に後から考えるならば愚かなことであるが、その現場にあってはなかなか動き難いものではあるだろう。しかし、自分の命を守るために、不安を放置せず危険の兆候を検証することは周りの人間の命を守ることにもつながる。

suvtechも壮大に危険を心配しているが、それはまたそういった危険が無ければ笑い話で大変結構という思いでやっている。自分、そして大事な人のことを思えば、危険の検証と確認はなんら恥ずかしいことではない。ひとつ笑い話のつもりででも確認に行くことが不安を解消し、また命を守る可能性があるなら行うべきなのである。

不安をそのままにするとき、大抵はろくなことにならない。正常性バイアスは、危険を思いそれに対抗するのに大きなエネルギーが必要であるがために逃げてしまう心理も大いに関係している。少しの労力や恥をかくことを惜しんで命を落とすことがないように、危機の兆候から目をそらさないように心構えをしておこう。

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