健康な皮膚からでも感染する野兎病

サバイバル時には病気に罹ると致命的となるリスクが高くなる。同時に、野山に入るようなことも発生する。野山には厄介な病気がいくつかあり、それらは適切な処置と投薬無しにはかなり危険なものが多い。今までもマダニが媒介する病気などとりあげてきたが、他にも厄介な病気が存在する。その一つが野兎病(やとびょう)である。

野兎病はその名の通りノウサギから、またその他のげっ歯類を主とした感染源として直接・間接的に人間に感染する。そもそも野兎やげっ歯類間の感染はマダニが媒介しており、マダニも気をつけなくてはいけないのであるが、特徴的なのは、感染した動物の死体からでも感染するということである。それは野兎やげっ歯類だけにとどまらず、感染した鶏や猫から感染した例もある。

幅広い感染源も厄介であるが、より注意しなければならないのは野兎病は健康な皮膚からでも感染しうるということである。通常体液感染などでは皮膚の細かい傷や粘膜などから菌ないしウイルスが侵入して感染するような病気が多いのであるが、野兎病菌は感染力が強く、健康な皮膚からでも侵入し増殖する。

したがってまず野生動物には触らない(生きているか死んでいるかかかわらず感染例がある)というのが予防の原則である。野兎の剥皮作業や調理の際に感染することが多いので、おおよそほとんどの一般人はそういった接触は少ないから感染の機会は少なく、日常生活ではさほどの脅威ではない。

一方で、サバイバルである。非常時に食料を得ようとして狩猟を考えるならば野生動物を捕獲し捌く必要がある。皮を剥ぎ、肉を解体し、調理して食するのである。必然的に野生動物に触れ、特に体内、血液によく触れることとなる。未治療では約三割が死亡するという話もあるため、食糧確保のために感染しては一大事である。予防には接触しないという方法があるが、これは手袋を用いて直接触れないという手段も取れる。食料を確保する際に病気にならないようにビニールないしゴムの手袋を用意したいところである。

なお、ありがたいことに野兎病は全地球的な病気ではなく、およそ北緯30°より北の北半球に多い病気のようである(恐らく媒介するマダニがそのあたりの気候を好むのだろう)から、それより南の方はひとまず安心である。ただ、日本はだいたいその範囲内である。近年(2008年)でも青森県、福島県、千葉県で合計5例の感染が報告されているから、頭の隅にでも知識を置いておいていただければよろしいかと思う。

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