サバイバルの前に虫歯を治療しておけ

突然のサバイバルに備えてすることは様々ある。食料・水・各種物資の備蓄、様々な技術の習得、道具類の習熟、果ては体力増強のためのトレーニングまで、資材と知識と肉体の準備を怠りなくするべきであろう。さて、するべきことの中で一つ記するのを忘れていたことがあった。それは怠ると日常でもかなりの痛手を負うことであるにもかかわらず、しかしながら先延ばしにしてしまうことの多い問題でもある。すなわち、歯の健康の問題である。

歯の健康問題には歯周病などもあるが、多くは齲歯(うし)、つまり虫歯である。虫歯は進行すると激しい痛みを伴い、また極度に進行してしまうとより内部へ進行して命の危険もあるものである。しかも一定以上の進度になったものは自然治癒の見込みはほぼない。つまり歯科医にかかるしかないのである。

サバイバルにおいては、虫歯はまずもって痛みが問題になるだろう。虫歯の痛みは重症になるとかなりのもので、かなり感情をかき乱すものになる。多くは苛立ちや怒りになるのであるが、そのような感情に振り回された状態では冷静な判断が阻害されることは間違いない。

第二に、虫歯は口腔内の傷であるということが問題となる。ある種の毒や細菌は無事な皮膚や消化管、粘膜等ではさほどの悪影響を及ぼさないが、傷口から血中に入ると大いに危険なものがある。毒虫・毒蛇に咬まれたときに口で吸い出すような方法が取られるシーンが各種メディアで見られることがあるが、こういった行為をする際に、口腔内に傷があるとそこから毒を取り込んでしまうのである。消化器の傷や口腔内のほかの傷と同様に、う蝕を受けた歯(虫歯)もこういった口内からの感染や被毒のリスクを高める要因になってしまう。

サバイバル時には生活習慣や体力などの面からも様々な病気が進行しやすくなるが、虫歯もその一つといってよいだろう。前述したように自然治癒は期待しないほうが賢明であり、小さなものであってもしっかりと歯科医の治療を受けておいた方がよい。これは日常の生活の質を守ることにつながるし、いざというときの生命を守ることにもつながるものである。少しばかり歯医者は苦手という人も一度しっかりと歯のメンテナンスをしておけば、強烈な痛みに後悔せずにすむだろうから、歯の点検をしてもらうことをお勧めする。

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火の扱いを誤ることなかれ

非常時、山奥やライフラインが途絶してしまった場合など、調理・暖房のために必要な熱を確保するには火を焚くことが一番単純で実行可能性が高い。ガスコンロやロウソク、オイルランプ等は大変便利なものであるが、それらの道具と燃料を装備しているかどうかに大きく左右されるために常時の備えが必要になってくる。焚き火であれば、薪炭の形で備蓄もするが、その辺りの木からも燃料が得られ、また瓦礫の中からも調達できる可能性が大きいために燃料の不安が少ない。その上、燃焼は複雑な道具を必要としない。焚き火台や炭火コンロ等があるが、これらは絶対必要なものではなく、燃焼効率を高め、また扱いやすくするためのものであるから、本質的には燃料だけで火を熾すことも可能なのである。単純で原始的であって、それゆえに最後の最後に利用できる可能性があるのがこれら薪炭の火であるのだ。

一方で、単純であるがそれがゆえに扱いが難しいという部分もある。ガスコンロなどではガスの供給を止めれば火は消える。ロウソクは吹き消せばよい。その後の火の始末の心配はないようなものである。しかし、薪炭により熾された火は少々では消えない。薪炭による火は後始末を間違えると、その道具無しでどこでも燃焼可能な性質から、悲劇的な出来事につながりうるのである。非常時の話ではないが、七輪の炭を無造作に捨てたために山火事にまで発展したケースもある。十分に気をつける必要がある。

どうしてそのようなことになるのだろうか。それは、燃料(特に炭)の燃焼温度の高さにある。焚き火を熾すのがが他の熱源と比べて難しいという事実はおおむね受け入れてもらえるだろうが、この難しさは燃料自体が燃え難いというところがあるのである。燃料なのに燃え難いというのは分かり難いかもしれないが、ガスやロウソクと比べての話である。ガスはそのままで、またロウソクは少しの熱でガス化し、そのガスに引火することで火が持続する。一方で薪はその成分が分解し、それにより発生したガスに火がつくことから始まるし、その後炭化した薪(熾(おき)という)が十分に熱されることで燃焼が維持される。炭の場合も他の焚きつけなどにより熱されることで燃焼を開始し、その熱が維持されることで燃焼を継続することが出来る。初めに多くの熱量を必要とするために燃えやすい小規模な火から少しずつ大きくするという工夫が必要なのである。

さて、ここで注目して欲しいのは、燃焼に高温を必要とするところである。この高温を維持するための熱量は、どこかしらに蓄えられなければならない。それはつまるところ、燃焼中の燃料そのものに多量の熱が蓄えられており、高温であるということである。したがって火の中から燃料を取り出したとしても、その燃料は燃焼中であり、その後も燃焼を継続する可能性があるということである。炭火をよく扱う人ならよく知っている話であるが、灰の中に埋まっていた炭を取り出し、息を吹きかけると再び赤々と燃え始めることがある。そこに焚き付けを載せて再び火を大きくするというテクニックもあるくらいであるから、可燃物を不用意に近づけてしまっていると、失火にいたる危険もあるということである。同様のことは燃料がない場合でも起こりうる。例えば炭を除去した七輪も、火を除けた直後であれば高温であり、可燃物を入れると燃焼を開始することがある。

こういったことから、薪炭の火、つまり焚き火や炭火を事故なく利用するためには十分な配慮が必要である。具体的にどのように気をつけるかであるが、これは極単純である。すなわち、十分に冷却されるまで安全を確保するということである。燃焼を開始・維持するために熱が必要であればそれをなくしてやるという単純なことなのであるが、確実に行うには注意深くする必要がある。揺らめく炎が消えるだけではなく、炭化して静かに燃えるものも十分に温度低下して、また火床となった部分や炉とした部分も冷却されねばならない。一番手っ取り早い方法としては、大量の水をかけるというものである。表面を冷却できていても内部まで冷却できなければ意味がないので、灰は水をかけてかき回すなどして確実に全体を水にぬれた状態にすれば火の危険はほぼない。次善の策としては、燃焼場所と(酸素遮断などによって火を止めた)燃料の保管場所に可燃物が近づかないようにすることによって安全を確保し、自然に冷却されるのを待つのがよいだろう。特に非常時では水の確保も大変であるから、この方法を取らざるを得ない場合もあるはずである。

火は、体を温め、安全でおいしい食事をもたらし、希望の光をもたらすものである。しかしながらその気性は時に激しく、全てを奪いつくすものでもある。どんなときでも火を友と出来るように、非常時に新たな厄災を引き起こさぬように、火の性質と扱いは十分に頭に置いておきたいものである。

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定期的に焚き火を扱う練習をしよう

焚き火というのはアウトドアの基本である。当然ながらそれより苛酷なサバイバルの基本でもある。自然から得られる燃料で火を熾し、熱を得るというのは重要である。サバイバルについて興味のある人であれば火のつけ方の一つくらいは頭にあるだろう。しかし、そういった人々のなかで、定期的に実践をしている人はどれくらいいるだろうか。

まずもって、自然の柴(落ちた木の枝などの薪となるもの)から火を熾すのは少しばかり技術がいる物である。ライターなどの現代的な道具を持っていても少しばかり手間取る、場合によっては火のつかないというものなのだ。したがって誰しもが一度は焚き火の着火を経験しておいた方がよいのであるが、そうして経験して会得した人であっても、定期的に行っていなければずいぶんと腕が鈍るものである。

火をつけるときの木の組かたを忘れたり、火のつけやすい適当な太さを見誤ったり、木の乾燥の度合いを測りかねたりするのは、すなわち火をつける時の勘が失われたということであり、焚き火のコツを忘れたということである。また、それまでに十分に火の扱いになれており、技術も十分であるという思いがあるから、火との距離のとり方を間違って火傷を負ってしまう場合だってある。非常時には怪我は大変に危険であるし、作業効率を大きく低下させるものである。また火熾しの失敗は即座に致命的にはならないが、貴重な燃料や着火資材を浪費してしまう。したがって定期的に勘を取り戻すために火熾しの実践をする必要があるのである。

かくいう私も現在、火傷した指で反省しつつこの記事を書いている。上に書いた失敗はほぼ私が体験したことである。平時でよかったと思いつつ、皆様におかれましては、このような失敗のないように定期的な練習をすることをお勧めするところである。

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