鍋が必要なときそこにあるとは限らない

いままで、水に関して述べるときに、安全を確保するための原始的方法として、煮沸するという方法を挙げてきた。しかしながら、煮沸するための道具というのはそんなに多くあるものではない。

水を沸かすというときに、おおよその方がヤカン(ケトル)を思い浮かべるだろう。一方で、キッチンを見回してみると、電気ケトルや電気ポットが多く普及しており、ヤカンが無い家庭も多く見受けられるようになった。それに湯を沸かす専用器具のヤカンはあって1つがいいところだ。

べつに、ヤカンで無ければ湯を沸かせられないわけではない。他にも、通常の鍋であれば湯を沸かせるし、土鍋や中華鍋も湯沸しに使える。また、金属製のカップでも不可能ではない。が、いったんキッチンから出ると、湯沸しに使えそうな物品は消えうせてしまう。

昔であればアルミの弁当箱とかブリキの水筒とかがよくあったのだが、最近は弁当箱も水筒もプラスチックのものが多い。水筒は金属製の魔法瓶型のものも多いから火のなかにおくこともできるが、断熱がよいので湯沸しにはむかない。(ついでに言うと、パッキン等が熱でだめになる)

それに、こういう家庭にある鍋類がどんなときでも使えると思っていると足元をすくわれかねない。家屋の倒壊があればすぐには取り出せないし、瓦礫の下から引っ張り出す間もなく水にさらわれてしまうことだってある。火災の高温にさらされ続ければ金属製品であっても破壊されることがあるし、なんら破壊が無くとも寄り付けない状況が発生しうることは、我々は思い知ったはずだ。

つまるところ、脱出装備に鍋を入れておけということになる。鍋があれば、湯を沸かすだけでなく、調理もできるようになる。そうなると、湯を沸かして調理することを前提とした装備の組み方も可能になる。水だけで食べられるようになると謳った非常食なども、湯を使えばよりおいしく食べられたりするし、そもそも湯が得られるならインスタント麺や乾麺などを非常食として使うことができる。あとは、米が炊ける。ジップロックに米を入れておけば白米の飯が食べられるというのは大きい。温かい食事というのはそれだけで気分を向上させるといわれるし、肉体的にも冷たい食事より温かい食事のほうが負担が少ない。

なんにせよ、鍋が1つあるだけで、行動の選択肢が大きく広がるのである。

備える鍋としては、アウトドア用品のクッキングセットがいいだろう。そもそもアウトドア、特に登山用品として設計された鍋は装備の容積と重量の制限があるために、大変コンパクトにまとまり、重量も軽いことが多い(ダッチオーブンなんかはすごく重いが、あれは背負って行動するものではない)。また、それぞれの好みでスタンダードな鍋らしい鍋ではなく、飯ごうや特殊な形の製品を検討するのもよいだろう。

選び方はそれぞれの好みと重量に応じてということになるが、何度も何度も湯を沸かすのは大変だから、1リットル程度は容量のあるものを選ぶとよい。コンパクトな登山用として用いられるような鍋は大変重量が軽く全体の重量をあまり増やさないのでいいかとおもう。

細かい話になるのだが、軽い鍋を選んだときに材質はチタンとアルミニウムがあるが、値段が圧倒的に安いのでアルミ素材のものを選びたくなるのが心情だと思う。ただし、アルミニウムはアルカリに弱い。サバイバル状況下においては焚き火で湯沸し等すると思われるが、その灰によって(灰はアルカリ性だ)アルミニウムは腐食をうけてしまう。最近は表面のコーティング等もあるが、扱いによっては腐食によって穴が開くことも考えられるので、装備が使用不能になったときの対処に自信が無ければアルカリに強いチタン素材のものを使用したほうが賢明だろう。

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