サバイバルにおける靴の重要性

災害等に備えるといったときに、まず食料や水が思いつくのであるが、実はサバイバルにおいてそれより重要なものとして、身体を保護する装備がある。今回は様々ある装備品のなかでも身体保護の装備、特に移動に重要な靴について考えたい。

災害に備えるときによく聞くのが「非常持ち出し袋」とかいう類のセットである。このセットはたいてい、今まで述べたサバイバルシートや食料や水等が入っている。また、キャンドルや懐中電灯、ラジオ等が追加で含まれている場合がある。しかし、これにはたいてい靴が含まれていない。想定として、玄関からゆったりとバックを持って逃げるようなことを考えているようにしか思えない。

ちょっと余談になるが、英語で非常持ち出し袋に相当する言葉で「bug out bag」というのがある。 bug out というのは急いで逃げるとかほうほうの体で逃げる的な意味があり、なんとも切羽詰った感じがでている気がする。そこから持ち出し袋を言い換えて、「緊急脱出バック」とかにすれば、もう少し装備のそろえ方が変わってくるんじゃないかなと思う。

ともかく、緊急時に悠長に靴を履いている暇などない。しかも、靴のある建物に戻れるかもわからないし、その場を(たとえば火災などで)すぐに離れなければならない可能性もある。そういったときに、裸足でどれだけ歩けるか考えてみよう。少しの間裸足で移動するくらいなら気をつければ可能かもしれないが、しかし、それでは移動に時間がかかるし、長時間の歩行は困難だと思われる。

非常時において重要なのは、できるだけ怪我をしないということだ。地震等で瓦礫の山になり、砂埃土埃が舞い上がる中怪我をすれば、致命的な感染を起こす可能性もあるし、大きな怪我をしても治療が見込めないことだってある。また、怪我は小規模であっても生存のための活動に支障をきたす。

特に足の裏を怪我すると最悪なのである。とげのひとつ、ガラスのひとかけらを踏んだだけで足の裏は傷つき、移動の速度は大幅に低下する。東日本大震災でみな心に刻んだと思うけれども、災害後の速やかな避難ができないと、命を落とすケースもあるのである。

よって、緊急脱出のときに引っつかんで出て行く荷物に靴を含めておくことは重要だ。ただのスニーカー1足であっても怪我の可能性を大きく減らし、移動速度の低下を防止する。

身を安全な場所に移動するのに必須の足を守る靴は、すなわち命を守る靴なのである。