どんぐりのパンをつくる

森でのサバイバルで食料調達を、というと、一般的な日本の義務教育を十分に受けたならば縄文時代の食生活を思い出す方も多いのではないだろうか。かつては原始的な狩猟採集を行っており、獲物をとり、また木の実などを採集して暮らしていたのである。現代人が行うときには、狩りも十分技術があればできるだろうが季節が合えば採集の方がより確実に安全に得ることが出来るだろう。

採集物は様々なものがあるが、よく実践されている物にどんぐりがある。どんぐりは一つの木の実の種類を言うものではなく、総称であるが、形や性質の似ているブナ科の木の実であり、ほぼ同一の作業によって調理して食される。今回はその一つの形、どんぐりパン(acorn bread)を作っている動画を紹介したい。

動画中ではもう殻が取られた状態だが、その前に殻を割って中身を出す必要がある。これは石の台にのせて石で叩くとか、ツールナイフのペンチを使うとか、歯で噛み割るなどで取り出すことが出来る。そして、中身をしっかりと選別する必要がある。虫に食われていたり内部が変色しているものは外さなければならない。その部分に有毒な物質、カビ等が存在する可能性があるからだ。

そうして選別された実は砕かれた後に布に包んで水に何度かつけられて絞られる。これは渋抜きのためである。布の目の細かさの関係でいくらか流れてしまうし、栄養も一部流れると思われるが、このように砕いてから絞るように渋抜きすることで短時間で渋抜きが完了する。砕かない実のままでは樹種によるが物によっては1週間流水にさらさねばならないものもある様である。

その後、絞った後の実の粉に少量の調理用の水を加えて形を整えて焼く。焼き方は動画中では石にのせて火の周りで時に動かしながら焼いているが、ほかに木の板にのせてあぶるように焼いたり、棒に包むようにつけて焼いたりと工夫の余地があるところだろう。焼きあがると生地がナイフや串を刺してもつかなくなる。これはよく菓子作りでも言われることであるが、こうなれば完成である。

どんぐりは生で食べようとすると、中にある渋(タンニン)が有毒で、大量・長期の食料には出来ないが、適切に処理すれば人類を一時期メインで支えてたくらいには優秀な食料となる。最新の備蓄食だけでなく、温故知新で自然界にも食料を求められる頭をもっておきたいものである。