松脂で接着剤を作る

自然物で道具を作るときに、部品ごとに作り、それを組み合わせて作る場合があるが、その固定方法は使える素材によって限定されてくる。

木と木であれば、ほぞとほぞ穴で組み合わせたりするし、紐や蔓性の植物を使って縛り付けて固定したりする。石と木であれば紐でくくりつけたりする。また石に穴を開けてそこに木を通して固定するなどもある。一方で、野外で十分な道具もなしに石に穴を開けるのは困難を伴うし、他の方法も小さいものなどでは難しかったりもする。

そういうときに、木工ボンドや瞬間接着剤など、接着剤が欲しくなるときがある。接着剤は、木の接合部を補強したり、組み合わせるだけで固定できないものを固定するのに役に立つからだ。

自然の中でもそういった接着剤を得ることは可能である。松脂を用いるのである。

松脂はそれ自体が天然の樹脂で、加熱すると柔らかくなり、これを用いて接着することができる。また、松脂はそのまま使うだけではなく、他の素材を混ぜることで性質を変化させることができる。

動画では、炭の粉とウサギの糞を混ぜている。

炭の粉は松脂が固まったときにより硬くなるようにする。また、ウサギの糞は、草食獣の糞全般にいえるが、草食動物でも消化できなかった強靭な繊維が多く含まれており、これが各所をつなぎとめる役割をすることで、固まったあとの松脂が割れることを防ぐ。

こうした混合物の接着剤を作ることで、例えば鏃を接着し矢を作ったり、穂先を棒につけて槍を作ったりできるようになり、工作の幅が広がるのである。

松脂キャンドルを作る

サバイバル時の夜間照明は大変に問題である。電池式のライトが使えれば良いが、そういった状況ばかりとは限らない。焚き火や松明はそういったとき使える明かりであるが、いささか大きく大仰になりがちだ。

そういったとき、使えるのが松脂である。松脂は安定して燃えやすく、わりと長時間燃える。燃料としてちょうど良く、そして自然にある植物、比較的一般的な松から得られるのでうってつけである。

この場合は穴を開けた木の棒に松脂をつめてキャンドルとして利用している。火口を乗せて点火すると、しばらくすると松脂がとけ、成分が気化し燃焼をし始める。始めのうちは火口だけの燃焼なので手で風をさえぎって炎が安定するのを待っているが、しばらくすると松脂に点火するのでそうすれば炎は安定し少々の風では消えることはなくなるだろう。

本当に松脂は利用法の多い材料である。今回は火、明かりとしての利用法であったが、他にも様々利用法がある有用で、重要なものである。

松脂で火をつける方法

松脂はロジンとテレビン油を主な成分とする樹脂である。これは可燃性で点火すると燃え続ける。プラスチックなども加熱し続けると燃えるが、その燃焼の性能は高い。同様に松脂も点火するとしっかりと燃えるいい火になる。

また、松脂の成分のテレビン油は揮発性がある。揮発性がある可燃物は総じて燃えやすく、点火しやすい。例えばガソリンなどは揮発性燃油であり、大変燃えやすい。またアルコールなども揮発性がある可燃物でこれも点火・燃焼しやすいものだ。そういったことからテレビン油を多く含まれた状態の松脂は点火しやすいのである。

動画では、松のこぶの様になっているところにナイフで小さく穴を開け松脂を取っている。このようにして松脂を取ると、若干木を傷つけることにはなるが、新鮮な(つまり揮発成分が多く残る)松脂を得ることができる。松脂は流れ出てすぐには液状で流動性があるが、その後空気に触れていると、揮発成分を失い、また他の成分も粘度を増して固まり始める。したがって点火のために使われる松脂はできるだけ揮発成分の豊富なほうがよい。

それによってメタルマッチなどで比較的容易に火をつけることができる。松脂で作る火は、少しくらい湿っていてもちゃんと点火でき、持続する。動画でも雨の日であり、濡れた木の皮に松脂を集めているがきちんと点火している。